6台目は「と」

スバル トラヴィック

    (とらゔぃっく)

グレード・年式Sパッケージ  2001年
エンジン型式直列4気筒DOHC
排気量2198cc
出力・トルク147ps  20.7kg-m
全長×全幅×全高4315×1740×1630
車重1470kg
新車価格224万円

説明

2001年8月発売。スバル初のいわゆるミニバンであるが、同社は1983年に軽商用車サンバーをベースに開発したリッターカークラスのワンボックスカー「ドミンゴ」を発売しており、3列シート車としては初ではない。

2001年当時、GMと資本提携していた富士重工業が、当時の欧州におけるGMの子会社であったドイツのオペルが開発したミニバン、ザフィーラのOEM供給を受けたものである。ただし、生産されたのは、ドイツではなくGMのタイ工場であり、GMジャパンを通じて輸入され、スバルブランド車として販売された。

ステアリング位置は右のみ。エンジンは当時日本に輸入されていたザフィーラよりも大きな2,198ccエンジンを搭載。また、日本市場導入にあたって、オーストラリア、ホールデン社からテストコースなどの支援をうけてスバル実験部隊によって事前に車輌特性などが確認された。

トラヴィック誕生の経緯は、まずGMの戦略として、GMタイ工場で生産されるザフィーラを安い価格でアジアを中心に展開するという計画が元となっている。GMは、その戦略展開の中心企業として1999年に資本提携をした富士重工業に白羽の矢を立た。また富士重工業自体も、ミニバンがファミリーカー市場の主流となっていたにもかかわらず、ラインナップにミニバンが無く、この計画でその空白を短期間かつ比較的少ない費用で埋める事ができると考えられ、GM及び富士重工業の両社とって大きな魅力のある計画と思われた。

しかし、オペル車の信頼性の低さやリセールバリューの低さが知れ渡り始めた時期とも重なっており、トラヴィックはザフィーラを含む他のオペルブランド車と共に販売直後から極度の販売不振に陥り、トラヴィックに対するザフィーラの価格設定もオペルブランド車のイメージ低下に拍車を掛けることとなり、2001年末にはザフィーラの輸入販売が中止されるなど、結果としてオペルブランドの国内販売撤退のキッカケとなった車種であると言われる。

2車輌は、生産工場の違いを除いて基本的には同じ車でありながら、トラヴィックがザフィーラよりもかなり安価に販売できたのは、生産コストの安いタイ製であったからであると言われている。しかし、内容的には大きなエンジンやより充実した装備品(一部グレード以外ではサイドエアバッグの不装備など安全装備はやや落ちる部分もある)など、むしろ高度な部分もあった。また、スバル側でフルエアロパーツ・16インチアルミホイールなども企画された。 トラヴィックの大きな特徴のひとつは、ドイツのアウトバーンを7人フル乗車状態で時速170km/hで安全に巡航・長距離移動ができるように設計されていることで、全車トラクションコントロール、EBD機能付きABS、ドアロック自動解除機能を装備するなど、その安全性や、高速走行でのスタビリティは高く、当時の日本の同クラスの車種とは次元の違う性能を持っていたといえる。これは元となったザフィーラの設計において、主に操縦安定性を高めるためのサスペンションチューニングなどを監修、それらを徹底的に追求した結果であるとも言われている。

多くの日本車で見られた内装や仕上げの過剰品質、使用頻度の低いシートアレンジを廃し、走行性能や安全性など、自動車としての基本的な機能を重視した点は興味深く、発売当初は多くの自動車評論家から高い評価を与えられていた。

ダイヤル式無段階調整式リクライニング機構は、日本車では一般的でなく、使いにくいと不評であったが、微調整出来る点では優れており、チャイルドシート使用時などの安全性には寄与していた。

2004年12月、GMタイ工場でのザフィーラ生産中止に伴い、日本でもトラヴィックの生産を終了(ただし在庫分の車両の販売は2005年3月末までに完売)。販売累計台数はおよそ12,000台であった。これにより、スバルの日本国内のラインナップからは2008年6月に独自開発のオリジナルミニバン「エクシーガ」(のちのエクシーガ クロスオーバー7)を発売するまでの間、いわゆるミニバンが無くなった。

思い出

一度「買ってみようかな」なんて感じさせた車でした。200万円台前半でドイツ車に乗れる。しかも高速巡行に苦がなさそうな車。そして誰も乗っていなそうな車。私のマニア心を擽る車でありました。後に知ったのはかつての私の上司が2台続けて乗っていたそうで、やっぱりいい車だったのだろうなと思ったほどです。ディーラーに行くとセールスがしつこいから見に行かない主義だった私が免許を取って初めて新車を見にディーラーに行くきっかけとなった車でもあります。そのときは冷やかしに見られたのでしょう、誰一人セールスは私のところに来ませんでしたが・・・。

もともとオペルにはいい車がありました。コルサ、ティグラ、スピードスター、シグナム・・・堅実なドイツ車でありながら走って楽しそうなクルマばかりでした。今のところ(2022年10月)日本では新車販売はされていませんが今後販売予定とのこと。ミニバン自体に市場性はなくなっているかもしれませんが、「走るミニバン」トラヴィック(ザフィーラ)のような車をまた作ってもらいたいものです。